天気が良い日は、毎日適度な紫外線を浴びるようにしてください!
これは、私が長年に渡り繰り返しお伝えしてきた大切なアドバイスの一つです。
もちろん、浴びすぎはよくありません。
しかし、まったく浴びないことは、浴びすぎること以上に問題となる可能性があります。
残念ながら、日本では、特に女性の間でこの考え方はまだあまり浸透していません。
実際に、東京にいると、UVカットの日傘、つばの広いサンバイザー、アームカバーなどを使用し、紫外線を徹底的に避けようとする人が年々増えているように感じます。
では果たして、そのような行動をとる人たちを責められるでしょうか。
長年に渡り、日本では「紫外線を一切浴びないこと」が、健康や美しさ、そして若々しさを保つ理想と考えられてきました。
雨の日も晴れの日も毎朝SPF50+の日焼け止めを丁寧に塗り、少しでも肌の老化を防ごうとする、そんな習慣が当たり前になっているのです。
しかし、こうした「紫外線は徹底的に避けるべき」という考え方に一石を投じる本が、先月出版されました(現時点では英語版のみです)。
著者は、高く評価されているサイエンスジャーナリストの Rowan Jacobsen氏です。
著書である「 In Defense of Sunlight 」では、「紫外線を完全に排除しようとする現代の考え方」が、本来得られるはずの健康上の恩恵を犠牲にし、短期的な美容効果だけを追い求める結果になっている可能性があると警鐘を鳴らしています。
特に30代、40代、50代の女性は、代謝、睡眠の質、そして心血管の健康に大きな変化が現れる時期です。
そのような年代において、太陽の光を完全に避けることは、利益よりも不利益の方が大きい可能性があると、この本は指摘しています。
私たちは長い間、「紫外線は避けるべき環境要因」であると教えられてきました。
しかし、本書で紹介されている数多くの研究は、その考え方を見直す必要があることを示しています。
私たちの身体は、光を生命活動を調節する重要な生体シグナルとして利用するように進化してきたことが、次々と明らかになってきているのです。
つまり、紫外線を100%遮断すると、肌を守ることはできても、本来、光によって働くはずの複雑な生理機能まで十分に働かなくなり、活力や代謝、そして若々しさを維持するための仕組みにも影響を及ぼす可能性があるのです。
その考え方を裏付ける代表的な研究の一つが、「Melanoma in Southern Sweden(MISS)研究」です。
▶︎参考資料
この研究では、約3万人の女性を20年間に渡って追跡し、日頃の紫外線曝露の習慣と寿命との関係を調査しました。
その結果は、非常に衝撃的なものでした。
日常的に紫外線を避けていた女性は、最も紫外線を浴びていた女性と比べて、あらゆる原因による死亡リスク(全死亡率)が約2倍に上っていたのです。
さらに興味深いことに、この研究では「紫外線を避けることによる健康リスクは、喫煙と同程度の大きさである可能性がある」とも報告されています。
そして、この死亡率の上昇は、肌の老化やスキンケアの問題ではありませんでした。
実際には、心血管疾患、糖尿病、そして慢性的な炎症性疾患の増加が、その主な要因として示されたのです。
さらに、このスウェーデンの研究結果を支持する研究が、イギリスからも最近発表されています。
▶︎参考資料
では、このような健康効果は、単にビタミンD不足を防ぐことだけが理由なのでしょうか。
多くの人は、「毎日ビタミンDのサプリメントを飲んでいれば、日光を浴びなくても問題ない」と考えているかもしれません。
しかし、本書では、光が生きた組織に当たることで体内で引き起こされる複雑な生理学的反応は、経口のビタミンDサプリメントだけでは再現できないことが、さまざまな研究をもとに丁寧に解説されています。
実は、このことはビタミンDに限った話ではありません。
化学的に単離・精製されたビタミンやミネラル全般にも共通して言えることだと、私は考えています。
このような、日光がもたらす複雑な生理学的作用については、スコットランドのエディンバラ大学(University of Edinburgh)の研究チームによる画期的な研究でも詳しく示されています。
研究チームは、人の皮膚には大量の窒素酸化物(NOx)が蓄えられていることを明らかにしました。
そして、皮膚がUVA(紫外線A波)を浴びると、これらの物質が化学反応を起こし、一酸化窒素(NO)として血液中へ放出されることが分かったのです。
一酸化窒素は、血管を拡張して血流を改善し、血圧を下げる働きを持つ非常に重要な生理活性物質です。
その結果、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスク低下にもつながる可能性が示されています。
▶︎参考資料
一方で、ビタミンDのサプリメントを摂取しても、この一酸化窒素の放出が促されることはありません。
つまり、一日中日焼け止めで紫外線を完全に遮断したり、ほとんど屋内で過ごしたりする生活では、本来私たちの身体に備わっている心血管の健康や細胞のエネルギー代謝を支える自然な仕組みの恩恵を十分に受けられなくなる可能性があるのです。
では、「できるだけ長く日光を浴びればよい」ということでしょうか。
もちろん、そうではありません。日焼けは皮膚のバリア機能を傷つけ、シワや肌の老化を早めることは、よく知られています。
だからといって、太陽を「敵」と考えるのではなく、毎日の生活の中に適度な紫外線を取り入れるという発想を持ってみてはいかがでしょうか。
例えば、1日に10~15分ほど、全身に日焼け止めを塗る前に外へ出てみる。腕や脚などに適度に日光を浴びるだけでも十分です。
こうした習慣は、体内時計(サーカディアンリズム)を整え、本来私たちの身体に備わっているさまざまな生理機能を活性化する助けになります。
本当の若々しさとは、シワが少ないことだけではありません。
身体の内側から活力に満ち、生き生きと機能していること。
それこそが、真のアンチエイジングではないでしょうか。
外へ出て、太陽の光を浴びましょう。
ただし、浴びすぎないこと。
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