BLOG008:知っておきたい「油の新常識」 オメガ3だけじゃない、健康のために摂るべき必須脂肪酸の種類とは?

BLOG008:知っておきたい「油の新常識」 オメガ3だけじゃない、健康のために摂るべき必須脂肪酸の種類とは? 820 312 オーガスト

「油は敵だ」とする間違った研究結果が公表されてから50年以上がたった今、その間違いを正し「油を味方」にすることを皆さんに伝えていくことが、栄養科学博士としての僕の役目だと思っています。

今日ご紹介する脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸です。
やはりどちらも、人間の健康を保つ上で極めて重要であるというのが僕の意見です。

特に飽和脂肪酸。世間では心疾患を引き起こす原因であるとして「飽和脂肪酸注意報」が出されていますが、僕は飽和脂肪酸こそ摂るべき油であると主張します。

では、いつものように人間の体内がどうなっているのかを見ていきましょう。
真実は、僕たちの身体が教えてくれます。

人間の細胞に多く見られるのは、実は一価不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸なのです。
その量は、オメガ3などの多価不飽和脂肪酸に勝ります。

人間の脳が何でできているのかご存じですか?
脳は、まさに飽和脂肪酸のかたまりです。

では、母乳はどうでしょう。
母乳は人間が成長する過程で、最も栄養価の高い食べ物と言っても過言ではありません。
そう、母乳にも飽和脂肪酸が豊富に含まれているのです(多価不飽和脂肪酸はごくわずか)。

飽和脂肪酸が心疾患を引き起こす毒であるのなら、なぜ乳幼児の成長に欠かせない栄養源である母乳には飽和脂肪酸が含まれているのでしょう?僕にはノンセンス過ぎて、まったく理解ができません。

ではなぜ、栄養価の高い一価不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸は必須脂肪酸と呼ばれていないのでしょうか?

必須脂肪酸であるには条件があります。
それは人間の体内で作ることのできない脂肪酸であること。
つまり、必須脂肪酸とは、体内で作ることができないため、普段の食事で積極的に摂らなければならない油のことを言うのです。
一価不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸は、人間の身体に必須な栄養素を含んでいるにもかかわらず、必須脂肪酸とは呼ばれていないのです。

さらに、僕たちはここ50年以上、飽和脂肪酸の摂取を控えてきました。
その発端は1978年に公表された、アンセル・キーズ博士による研究結果にさかのぼります。

キーズ博士は、食生活と心疾患の関係性に着目し、7カ国の国民の調査を実施。
その結果、飽和脂肪酸を多く摂取する国では心疾患になる確率が高いと結論づけたのです。
多額の費用を費やして行われたこの研究は、栄養学のバイブルの一つとして広く知られていきました。

しかし残念なことに、この研究結果は信ぴょう性にかけていました。
キーズ博士は「油(特に飽和脂肪酸)は心疾患の原因である」という自らの仮説を証明しようと、22カ国で調査を行いました。
それにもかかわらず、公表したのは7カ国の結果のみ。どうしてだと思いますか?

なぜなら、残りの15カ国の結果には、彼の仮説を証明できる証拠がなかったから。

つまり、キーズ博士は飽和脂肪酸が心疾患につながるという確固たる証拠がなかったにもかかわらず、自らの仮説を事実として公表してしまったというわけです。

一人の博士によって事実が上書きされてしまったこの話は、ニーナ・ティーコルズ著「The Big Fat Surprise」というベストセラー書籍にて詳しく紹介されています。(日本語版なし)
今思えば、僕らはキーズ博士ではなく、砂糖の危険性を紐解くジョン・ヤドキン博士の主張に耳をかたむけるべきでした。

これら油の新常識に関する本で、もう一冊皆さんに紹介したいのが、ゲーリー・トーベス著「Good Calories, Bad Calories」です。(日本語版なし)

面白いことに、今回僕が紹介した本は両方とも、医者や栄養学のスペシャリストによって書かれたものではありません。
調査報道のプロであるジャーナリストによって書かれています。

僕ら専門家は、過去の研究結果や栄養学の常識に固執するのではなく、良い油を日々の食事に積極的に取り入れる「油の新常識」を探求し、確立していくべきだと僕は思っています。

幸いケトン体ダイエットの普及を機に、油を薦める専門家たちが増えてきています。(ケトン体ダイエットにすべて賛成というわけではありませんが)

最後に、
「なぜ、油をより多く摂るべきなのか」

人間の心臓は、脂肪酸のみをエネルギーとして使っています。
他の筋肉のように、糖質をエネルギーとしません。
人間の命をつなぐ一番大切な筋肉が、毎日動くために脂肪酸を必要としています。

健康な心臓のために、油を摂るのか摂らないのか。
決断するのは皆さんです。